○寅さん(「男はつらいよ」山田洋次監督)○

2015年1月15日 (木)

【山田監督講演】「神戸ロケ 運命だった」

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 寅さんが柴又に帰ってきます。大慌てのおいちゃんやおばちゃん。嬉しそうな桜。そしていつもの大騒動…。

 スクリーンに映された「男はつらいよ」の名場面に観客は大笑い。往時の映画館にいるかのようです。ああ、これが寅さんの魅力なんだ、としみじみ。震災20年を迎える神戸「市民のつどい」で山田洋次監督の講演があり、10分ほどの総集編が流れました。

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 最終48作「紅の花」は被災直後の神戸でもロケが行われ、ラストシーンは長田区で撮影されました。「運命を感じた」と山田監督は話し、「あのとき必要だったのは笑いと元気でした」と誘致メンバーの方たちも振り返っていました。

 「人情味ある顔見知りの地域社会や町並み、そして家族の形が日本各地からどんどん消えている」。山田監督は長田区の人たちのあたたかいもてなしを思い起こしていました。

  「亡くなった方の分も毎日を大切に生きていこう」。西灘小の子どもたちの合唱「しあわせ運べるように」を会場のみなで歌い上げます。

 悲しみを分かち合い、心の支えを見つけられる街でありたい―。そんな想いをともにする時間になりました。そう、寅さんと一緒に。

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2014年2月20日 (木)

【寅さん点描】誰を恨むわけにはいかない

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誰を恨むってわけにはいかねぇんだよね、こういうことは。

そりゃ、こっちが惚れている分、向こうもこっちに惚れてくれりゃあ、世の中に失恋なんてのはなくなっちゃうからな。

そうはいかないんだ。

 ◆

「寅さん、もういいの。済んでしもたことは、くよくよ考えへんたちやから。見かけによらず」。

いしだあゆみ演じるかがりさんのせつない気持ちが画面いっぱいに滲む名シーンです。丹後半島は伊根湾に立ち並ぶ、舟屋の美しい風景に心も溶けていくよう。

二人の面影を求め、何だか旅に出たくなります。1982年公開第29作 「寅次郎あじさいの恋」から。

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2014年1月16日 (木)

【2014年柴又から】「幸せ」を大事に…

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 生きてりゃいろんなことがあるけれどもさ。

 いいかい、幸せになるんだぞ、きっと。

 でなきゃ俺、承知しねぇからな。


マドンナにいつも一目ぼれ。そしておせっかいの果てに振られてしまう寅さん。

でも、マドンナはちゃんと幸せなんですよね。
それがきっと、寅さんの「幸せ」なんですから。

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自分の幸せも大事。でも、人の幸せも大事。
大きな幸せも大事。でも、小さな幸せも大事。


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本当の豊かさに満ちあふれる1年を。
柴又から。今年もみなさま、どうぞよろしくお願いいたします。

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2013年1月 4日 (金)

【2013年】人生は旅のよう…

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新年が明けました。さて、今年は寅さん、どこに出かけるのでしょう。風の吹くまま、気の向くまま。その先にはきっといろんなドラマが…。


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地域のあり方、家族のあり方を含めて、「暮らし」というものが一体どういうものであるべきか、そのモデルをぼくたちは取り戻さなきゃいけないんじゃないか。

この年末年始、柴又に開館した山田洋次ミュージアムを訪れました。地域や家族のきずなを寅さんなどを通して描いてきた山田監督。もうすぐ小津監督「東京物語」を現代版にリメークした「東京家族」が公開になります。

舞台は、瀬戸内海が望める露天風呂がある大崎上島が登場します。ラストシーンの行方にその答えがきっと心にふんわりと浮かぶのではないでしょうか。

ワクワクドキドキを大切に。あたかかくやさしく。寄り添う心を忘れない1年になることを…。

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2012年2月19日 (日)

【寂しいよ、おばちゃん】下町のあったかさ 心に

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 寅ちゃん、お帰り。お腹減ったろう。

 柴又に帰った寅さんを、いつも優しい眼差しで迎えていたね。


 あたしたちがどんなに頑張ったって、跡取りがあれじゃあ、いやんなっちゃうよ。ううう…

 そうだよねえ、寅さんの愚行にいっつも泣かされてたよね。

 
 あらやだ、あたしったら!

 まったく。でもさ、ドジを踏んでもみんなで笑いあっていたよね。


 なのに…。

 お芋の煮っ転がしはもう食べられないね、寅さん。おいちゃんもおばちゃんもタコ社長も。みんな逝っちゃうなんて、この世はずいぶんと寂しくなっちゃったよ。

 シリーズ全48作品を通してつねさん役を演じた三崎千恵子さんが亡くなったニュースには、ひときわ寂しさを覚えました。寂しさのわけは、「おかあちゃん」らしさの象徴だったからかもしれません。

 台所姿でとらやを立ち回り、困っている人がいたら真っ先にほおっておけないおばちゃん。情にもろく、下町にはこういうおばちゃんがどこかに居た気がします。


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 そんなおばちゃんを追い求めるかのように、第20作「寅次郎頑張れ!」(1977年)を見ました。とらやに下宿しているワット君(中村雅俊)と食堂で働く幸子(大竹しのぶ)の恋愛をめぐるドラマ。マドンナは藤村志保さんですが、今回の寅さんはどちらかといえば恋の指南役です。


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 ふられたと勘違いした「失恋青年」ワット君をおばちゃんが心配そうに励まします。親や恋人、家族や故郷…。人を想う気持ちがあふれるあったかい一作です。

 親類や宇根さんの訃報も続き、ちょっぴり気持ちが波打ちます。やっぱり寅さんを見ると、ホッとします。「おせっかい」という言葉がマイナスイメージで語られることが多くなった今日このごろ。ふらり柴又に帰って、おばちゃんに会いたくてなりません。

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2011年12月12日 (月)

【寅さん「人間の証」】音楽を聴き、絵を愛で、そして恋をし

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 あっという間に冷え込む年の瀬が迫ってきました。寅さんシリーズの年賀状を思案しながら、岸惠子さんマドンナの第12作「私の寅さん」(1973年)を見ました。岸さんは寅さんの同級生の妹役として画家のりつ子を演じています。

 芸術と寅さんなんてどうやっても結びつきませんが、デザインやアートって大事なんだな、と思わせてくれるとらやでの団らんがじんわり心に残りました。博の語り。真骨頂ですね。


おいちゃん
 「だけどな、寅。早い話が人間、食うために生きてるんだぜ」


 「あーあ、なんだかとても話し合えないな、この連中とは。なあ、博」


 「そうですねえ、そりゃ確かに食っていくってことは大変なんですよ、この世の中じゃ。でもね、人間が生きるってことはそれだけじゃ決してない、そうですよ、だからこそりつ子さんみたいな人が必要なんですよ、つまり、芸術家がね」

タコ社長
 「それ、どういうこと」


 「だから、美しい音楽を聴いたり、素晴らしい絵を見て感動するためにだって、僕たちは生きているんじゃないですか」


 「そうだよ博、おまえいいこと言うね」


 「とにかく、もっともっといろんなことに人間は喜びを感じて生きているはずですよ。ま、例えばですねえ…」

さくら
 「おいちゃんの盆栽だって、そうだわね」

おばちゃん
 「こうやってみんなで楽しく話すこともね」

おいちゃん
 「寅が恋をするのもそうか」




 「ばーかやろう!」


 「いや、笑い事じゃありませんよ、その通りですよ。にいさんが美しい人に恋をする、これは、にいさんが人間として生きていることの証ですよ」


 「よせよ、お前、んなあ真面目くさって、しらけるよ。いや、そりゃそうだ、そりゃそうだ。人間の証ね。そうか。じゃ、今夜はこの辺でお開きということにして」。


 人間の証。寅さんが教えてくれるのは、やはり人が生きることの豊かさなのでしょう。デザインやアートも音楽もそう。その豊かさを認め、伸ばしあえれば、この社会もきっと本当にあたたかになる気がします。

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2011年9月29日 (木)

【寅さん記念館350万人】ご無沙汰しっぱなしで…

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 いよっ!うれしいねえ。お客さんが350万人を超えたってよ-。 


 葛飾柴又・寅さん記念館が1997年にオープンしてから14年。このほど、入館350万人を達成しました。栄誉を受けた札幌市の夫妻は、「大ファンだった。寅さんが妹おもいで、『おいちゃん』『おばちゃん』に結局は甘えるところがいい」と話していたそうです(朝日新聞)。確かに確かに(^^♪

 寅さんこと渥美清さんが亡くなって15年。柴又では夜のイベントなども開催され、記念館もジャズライブや俳句大賞を開催するなど「寅さん後」の魅力づくりを続けています。

 中でも変わらずあってほしいのが、「下町人情のシンボルであり続けたい」(青木区長のあいさつ)ではないでしょうか。記念館は来年にリニューアルの予定があるそうです。これもまた楽しみです。朝日新聞の記事は<こちら>。 


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 そうこうしているうち、男はつらいよ・寅さんDVDマガジンも19号「フーテンの寅」(第3作、1970年)になりました。テンポ良く美女に惚れ、そしてフラれる寅さんが滑稽です。おいちゃん・おばちゃんの三重県は湯の山温泉の旅行も笑いどころがいっぱい。花沢徳衛さんのシブい演技は「あっぱれ!」の一言に尽きます。


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 15号「浪速の恋の寅次郎(27作)」も涙あり、笑いあり。その後、名作の誉れ高い「あじさいの花(29作)」「知床慕情(38作)」が続き、この18号は後藤久美子が登場する「ぼくの伯父さん」でした。 

 最近はなかなかゆっくり見る時間がないのですが、8月27日の朝日新聞beでは読者が選ぶ「私もほれた寅さんのマドンナ」ランキングを紹介していました。

 1位は、歌子こと吉永小百合さん。2位はリリーと言った方がいいでしょう。そう、浅丘ルリ子さん。3位に大原麗子さん、4位は竹下景子さん。そして5位に松坂慶子さん。もちろん、さくらは別格扱いでしょう。

 <情けは人のためならず>を、「情けを他人に掛けても本人のためにならない」と誤用するケースが増えているそうです。情けは人のためではない、自分のため、というのが本当の意味。だとすると、他人に照れながらも、そしてへたくそながらもたくさん情けをかける寅さんは、実は自分に情けが欲しかったのかもしれませんね。

 強がりの癖に寂しがりや。寅さんのあったかさには、どこか引かれずにはいられません。


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2011年3月 4日 (金)

【男はつらいよDVDマガジン】隔週で「よっ!」 寅さんに会える 

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 新聞広告などでご存知の方も多いことでしょう。今年1月に講談社から発売が始まった「男はつらいよ 寅さんDVDマガジン」。隔週で50作発売される予定で、月に2度も寅さんに会えます。これは何ともうれしい。


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 1日に発売されたばかりの最新第5巻は、1982年公開の「花も嵐も寅次郎」。沢田研二と田中裕子を迎えたシリーズ30作で、寅さんが2人の恋愛キューピッド役に。最後はいつにも増したハッピーエンドで、気持ちがぐっと明るくなれる秀作です。


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 この作品のロケ地といえば、大分県の鉄輪温泉と湯平温泉を思い出します。以前も紹介しましたが、この1月にも再訪しました。舞台のひとつ、湯平駅は無人となり、ひっそりとしていましたが、2番線にある「寅さん 思い出の待合所」は健在です。


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 ここではロケの様子などを写真や記事などで振り返ることができます。聞こえるのは鳥のさえずりくらいだけだったのに、この待合所に入るとなんだかにぎやかな気持ちになります。


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ホームには田中裕子と沢田研二が実際にも結ばれたことから、「縁結びのベンチ」なるものが残されていて、幸せいっぱいな場所でもあります。


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 さて、寅次郎が柴又に久方ぶりに帰ってくるエピソードを収めた第1巻がこちら。山田監督のインタビューや立川志楽さんの見どころガイドなども付いていて、ただの作品集だけでないところがファンを飽きさせません。


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 そして第2号は、兵庫県(播州)龍野が舞台の第17作「寅次郎夕焼け小焼け」(1976年)。マドンナは大地喜和子さん。宇野重吉さんや寺尾聡さんら渋い名優がずらり。岡田嘉子さんの「後悔には2つあってね…」も味わい深い。発売されたその週、思わず出かけてしまいました。


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 「ここからの眺めが一番美しい。青観先生にこの山を描いてほしいのです…」。龍野橋東詰から見る鶏籠山。市の観光課長役の桜井センリさんも名優ぶりを発揮していました。


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 寅さん一行が泊まった旅館「梅玉」さん。現在も静かなその風情が残っています。


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 青観先生が歩いた龍野の街並み。脇坂藩屋敷跡前の辺りです。


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 牡丹と寅さんが東京の静観先生に手を合わせるあの場面はここ。思わず心があったかくなります。


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 戻ってマガジン第3巻は、いよいよリリーが登場!寅さんとの再会を描いた1975年・15作「寅次郎相合い傘」。船越英二さんとの北海道珍道中が面白おかしくて。


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 そして第4巻は北陸が舞台の第9作「柴又慕情」(1972年)。歌子こと吉永小百合さんがマドンナで出演し、宮口精二さんの頑固オヤジぶりも見ものです。

  「寅さんみたいに出会いと別れを繰り返し、人の気持ちに敏感になる。それが作曲、演奏のエネルギーになる。ひろみはつらいよ、です」


 グラミー賞受賞ジャズピアニスト上原ひろみさんが朝日新聞のインタビューにこう応えていました。いつの世にも、多くの人の心に。寅さんはいてくれるのですね。

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2010年12月25日 (土)

【男はつらいよ名言集2】寅さんはみーんな知ってる

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 失恋青年。
      お前、まだ生きてたのか。
 

 ページをめくって最初に出てくるのが、第20作「寅次郎頑張れ!」のこの文句。思わずドキツとしました。


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 そして次は大きくこの決めゼリフ。「う~ん、実はね、寅さん…」と思わず語りたくなります。「人生に、寅さんを。男はつらいよ名言集2」が11月にキネマ旬報社から発売されました(1200円)。山手線の駅に寅さんのメッセージがそれぞれ掲げられ好評に。それをまとめた第1弾の発行から2年になります。大きさなどは一緒ですが、表紙はまっかっか。


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 ありますよ。いつもいつも。でもね…


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 うれしいなあ。ありがとう。


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 幸せの青い鳥なんて、と思うところが、寅さんに言われるとなんだか不思議と「そうだよなあ、頑張ろうか」「まあ悪いことばかりでも人生ないよな」と心から思ってしまうのはなぜなのでしょう。山田洋次監督が救いのある映画づくりをモットーとしてきたこともあるでしょう。


 「せつない恋も、うまくいかない人生も、寅さんは知っているんだね」


  書評にあったこんな言葉。人間味あふれる寅さんの声が今にも聞こえてきそうです。

 40の名言が収められています。ニクい寅さんの顔とともに。第1弾よりもやわらかくいい表情が多い気もします。

 人も社会も余白がなかなか取れないことが増えてきました。せめて正月は寅さん。そんなことをふと思い出させてくれます。

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2010年10月 3日 (日)

【池内淳子さん逝去】旅に憧れた寅のマドンナ

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 「ああ、いいなぁ旅って。あたしも今すぐにでも行っちゃいたいわ。こんなお店も、何もかもみんな捨てちゃって。ねえ、寅さん」

 俳優の池内淳子さんが亡くなり、また寅さんファミリーが一人減ってしまいました。「男はつらいよ」第8作(1971年)のマドンナ役だった池内さん。柴又で開いた喫茶店を一人で切り盛りする母役(貴子)を演じました。
 寅さんはそんな貴子に引かれていきます。見返してみると、全体としては地味な印象ながらも、趣深い秀作でもありました。

 まず一つは、この作品で寅さんは振られていません。振られる前に柴又を旅立つのです。なぜか。
 貴子は寅さんと話すうち、旅への憧れを募らせます。ところが、フーテン暮らしの実態はもちろん伝わりません。そこに寅さんは悲しさをどこか覚えるのです。

  貴子 「寅さん、またいつか旅に行くの」
  寅   「ええ、そりゃそうですねえ」
  貴子 「そう。いつごろ?」
  寅   「いつごろでしょうか。風に誘われるとでも申しましょうか。ある日、ふらっと出て行くんです」
  貴子 「羨ましいわ。あたしも一緒について行きたいなぁ」
  寅   「そうですかねぇ、そんな羨ましがられるほどのもんじゃねえんですけどね…」

 とらやに帰って、寅は荷物をまとめて旅に出ようとします。そしてさくらに問いかけます。

  寅   「さくら、兄ちゃんのこんな暮らしが羨ましいか。そんなふうに思ったこと、あるかい」
  さくら 「あるわ。一度はおにいちゃんと交代して、あたしのこと心配させてやりたいわ。寒い冬の夜。こたつに入りながら、ああ、今ごろさくらはどうしてるかなぁって。そう心配させてやりたいわよ」
  寅   「そうかい。さくら、すまねえ」

 こう言って柴又を去ります。あったかいねえ、さくら。そして、せつないねえ、寅さん。

 この作品のもう一つの大きなモチーフがリンドウの花。そう、博の父役で出演した志村喬さんが語る「庭に咲くリンドウの花」のあのセリフが浮かんできます。

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信州の安曇野でね、田舎道を一人で歩いているうちに日が暮れちまってね。
暗い夜道を心細く歩いていると、ポツンと一軒の農家が立ってるんだ。
リンドウの花が庭いっぱいに咲いていてね。
あけっ放した縁側から、明かりのついた茶の間で家族が食事をしているのが見える。
まだ食事に来ない子どもがいるんだろう。
母親が大きな声でその子どもの名前を呼ぶのが聞こえる。

私はね、今でもその情景をありありと思い出すことができる。
庭一面に咲いたリンドウの花。あかあかと明かりのついた茶の間。にぎやかに食事をする家族たち。
私はそのとき、それが、それが本当の人間の生活ってもんじゃないかと…。
ふとそう思ったら、急に涙が出てきちゃってね。

人間は、絶対に一人じゃ生きていけない。
逆らっちゃいかん。人間は、人間の運命に逆らっちゃいかん。
分かるね、寅次郎君。

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 このエピソードは、寅さん年賀状シリーズの2006年に取り上げました。寅にとっては、「家族を持とう」「結婚しよう」なんて分かりやすいメッセージになったのですが、深深としたこの場面の背景には、母を亡くした息子の博が「母さんには自由なんてなかった、まるで父さんの女中だったんじゃないか。これじゃあ母さんがかわいそうだ、あんまりだ」と涙ながらに家族の形を問いかけた姿が透けてみえます。

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 そして、森川信のおいちゃんが最後となった作品でもあります。「まくら、さくら取ってくれ」とボケる名シーン。「バッカだねえ、まったく」の決め文句。忘れられませんね。旅役者さゆりの一座が出てくるのもこの作品でした。

 サブタイトルは「寅次郎恋歌」。恋をし、歌い、そして旅し続ける。気楽ではあるけれども、決してうらやましがられるような暮らしぶりではない。それがフーテン暮らし。
 リンドウの花言葉は、「群生せず一本ずつ咲く姿から、<悲しんでいるあなたを愛する>といわれている」とありました。
 今回、一番愛された存在は、寅さんこそだったのでしょうね。
 


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